だが目の前で、彼女が

 だが目の前で、彼女が他の男と、その男が借りている部屋に入るシーンを見る事になるとは、夢にも思ってもいなかった。はっきり言えば落ち込んでいる。今のこの、やるせない気持ちを如何表現したら良いのか。だが落ち込んでばかりもいられない。そんな事よりは金だ。成功報酬を貰わなければならない。

 一昨日二人が部屋に入る瞬間の写真は撮ったし、その前の二人の行動もある程度は撮っている。後はそれらの前後関係を示す報告書とその写真を付けて吉永さんに渡せばよい。浮気調査の報告書なんて簡単な物で、内容なんてどれもこれも似たり寄ったりだ。

 自分のパソコンの中に何時も使っている書式があり、その中の必要な部分だけを書き込み、不必要な部分を削除すれば出来上がる。十五分ほどで、それが出来上がり吉永さんの自宅に電話する。当然この時間に御主人がいない事は確認してある。五回目のコールが鳴り始めた時に彼女はその電話に出た。

「はい吉永ですが」前回、彼女と会ったときのイメージとは、かけ離れた声が受話器の向こうから聞こえてきた。「吉永澄子さんですね。大友送料無料事務所の大友です」「ああ、送料無料さん。今回はお世話になります」「早速ですが生保と国民共済のサイトに関する本題に入ります。先日の依頼の件ですが、御主人の浮気調査の報告書と証拠の写真が出来上がりました」…あ、やっぱりねぇに続く。